小説を書いていたんだよその言葉を残して上田修二の姿は消えた。彼が言った通りこの携帯はゆかりさんの携帯だろう。その事に気がついた船長は姿を消した。そんなところではないかな。そう思いながら何気なく携帯を裏返して、そこに貼ってあるプリクラのシールに気がついた。鮮明な物では無いが、大谷賢治と児玉ゆかり、その二人が並んだシールだった。これで間違いない。これで証拠になる。

再び一樹を見ると、おどおどした態度の一樹が居た。

「一樹……今から警察に行こう。自首するんだ」

「大友さん。もう少し待って貰えますか」

「どうした。恐れなくても良いんだ。それに一度出頭すれば、後はもう流れに任せれば良い。自分の犯した罪を償えばいいんだ」

「そうじゃないんだ。そうじゃないけど、理由は分からない」

そうだよな。急に警察に行くとなっても、心の準備は出来ないよな。それにこの状態だと、逃げる事もないだろうし、あの船長が出てきても、彼もそれなりの目的があるから逃げ出す事はしないだろう。もう一日か二日待ってやるか。

「一樹。俺はもう帰るから。少しの間だが、ゆっくりと考えるんだな。それとこの携帯、預かっていくから」

俺の言葉に対する一樹の言葉はなかった。外に出て歩いて帰ることにした。傘は引き続き借りたままだ。だがその傘の意味がなかった。横殴りの雨が俺の頬を濡らす。俺は汚れたハンカチで携帯を包む様にして持っていた。何故あの時この携帯は鳴ったのだろうか。

今は何事もなかったように静まり返る携帯電話。その携帯の電源ボタンを押してみた。3秒ほど待つとその携帯の生命は動き出し、本来の機能を持つようになった。その中のアラームの設定を探す、多分そこに答えが有るような気がしていた。暫くボタンを触っていると